大シマロンでみつかった禁忌の箱。

『風の終わり』『地の果て』

この二つの箱を一刻も早く眞魔国に届けるためにギュンター達には先に行かせた。

眞魔国に帰る前に一度カロリアに寄りたい、と言うユーリの要望に答えるために
数名の兵と大賢者と供に残ったのは良かったが、陛下と猊下が地球に帰られた以上
ここにいる必要はない、と種を返したところだった。



「いま、問題をおこせば眞魔国との同盟は決裂するぞ。それでもいいのか?」

「問題ないよ、我々がお前を匿ってる事を誰も知らなければ意味もない。」



囲んでいた小シマロンの兵達が一斉に刀を構える。
それにたいして、こちら側も臨機体制をするが、向こうは20名ほどの兵力に対し、こちらは10名にも満たない。

「閣下!お下がりを・・」

「お前たちは先に行け!!」

「しかし・・・!」

「いいから急いで船をだせ! 僕もすぐに飛び乗る!」

指示に従い船を出そうとすると少子マロンの兵たちがいっせいに飛び掛ってきた。

「・・はあああ!!」

ゆくてを拒む兵たちを凪ぎ捨て道を作る。こんなとこで捕まる訳にはいかない。
たった一人でも残して行けば、それを利用してこいつはユーリを呼び寄せるだろう。

「いますぐ白鳩便を出せ!兄上に知らせを! 先に言ったギュンター達でもいい!」

「・・・は!」

船に飛び乗った兵たちはすぐにでも書き始め・・



「何をしている。殺せ」

兵達が次々と応戦してく中、サラレぎーは静かに言い放った。
あまりの温度の違いに近くにいた兵士がぼうぜんと聞き返す。

「・・・は?」

「早く船を沈めろといってるんだ、・・ああ彼はだめだよ。大事な人質、だからね。」

くくっとのどを鳴らして笑ってる主君にたいし、兵士は背筋の凍るような感覚をおぼえながら
いそいで船のもとへ走った。 この王に逆らえば自分たちの命も危ういと知っているからだ。



「閣下!お早く・・!」

「ああ・・!」

ヴォルフラムがなんとか周りの兵士たちを追いやり飛び乗ろうとした瞬間だった。

パンッ!と弓矢が放たれ、今まさに飛び立ったばかりの白鳩便にあたる。
羽を捥がれた小鳥はそのまま海に落ちていった。

「・・・くっ」

こうなったら自分で・・・

その時後ろから背中に激痛が走った。
ガンっと音とともに前のめりに倒れる。
どうやら鉄パイプのようなもので殴りつけられらしい。

「・・・か、はっ」

そのまま頭をつかまれ地面に叩きつけられる。あっという間に数名の兵に乗りかかられ
ヴォルフラムは身動きができなくなった。

それでも諦めるわけにはいかなかった。自分が捕まればきっとユーリが来てしまう。
あいつは誰かが助けを求めていればすぐにでも手助けしてしまう、お人よしだ。
きっとそれが誰であろうと。

ヴォルフラムは必死でもがいた。どうにかここから抜け出さなければ・・・
「閣下・・」船でも小シマロンの兵たちが飛び乗ったせいで乱闘中だった。
彼らに助けを求められる状況ではない

「お前たちはいけ・・!」

「しかし・・」
「はやくしろ・・・!」

叫びながら支持するヴォルフラムのもとに、やけに落ち着いた足とりで近づいてくる人物がいた。

サラレギー・・・・

いったいこいつは何がしたいんだ・・・っ

自分の目の前で何の感情も示さず見下ろしてくる瞳を思いっきり睨み付けた。



「あまり抵抗しないでくれないか、殺してしまうかもしれない。」








水中華_______________2






頭の中がぐるぐるする。もうこの感覚にそろそろ慣れたかと思っていたが
久々のスタツアは俺の意識の反するように地球に送られてしまった。

「ぷはあ! 戻ってきちゃったね、久々に。」

はあ、はあ。
隣の村田も苦しそうだ。

そりゃそうだろう、大して動ける状態じゃなかったあの体で無理やり運ばれてしまったのだから。

だが、今はそんな彼を気を配ってやれる余裕はなかった。

「村田、急いで戻るぞ。」

「は・・?何、言っちゃってるの渋谷、無理だよ・・!」

出てきた公園の池に再び戻ろうとする俺を必死に止める。

「あいつが・・あいつがまだあそこにいるのに俺たちだけ先にこっち来ちゃうなんてっ!」

「どうせもう繋がってないよ、渋谷!!」

制す村田の腕を払い、また池に飛び込んだものの一行に引きずり込まれるような感覚はない。

「なんで・・・・」

「無理だよ渋谷。どうせ今戻ったところで眞王廟に繋がっちゃうだけで彼とは会えないよ。」

「そんな・・・」

「今回は長く向こうにいすぎたからね。こっちでしばらく休養しないと。」

ね?とウインクとともに笑顔で笑ってしまわれては安心せざる終えなかった。

ああ、俺は本当に取り戻したんだ。

みんな、無事に・・・。

池からあがりびしょぬれの服を絞る。

ある程度絞り終えた村田が、それに、とにやにやしながら聞いてきた。

「フォンビーレフェルト卿と約束したんだろ?眞魔国に帰ったら話があるって。」

「・・・な!?・・お、お前聞いて!?」

「やーー大賢者をなめないでよね〜。それに渋谷、あんな大声で怒鳴ってたら周りに丸聞こえだってー」

渋谷も隅に置けないねーと茶化してくる村田にその時の状況を思い出して頬がカアーっとあつくなる。

「だってあん時はしょうがないだろ あいつが俺の身代わりになんかなろうとするから・・。」

「・・うん。そうだね、彼はいつだってまっすぐで、君に対して命がけだ。」

「・・それが嫌なんだよ・・・。俺はあいつにいなくなってほしくない。」

そうだ、許せなかった。勝手に自分の身代わりになって死に行くような行為をするあいつが。
いつだってそばにいてくれた、俺を支えてくれた。

そばにいてやると約束したんだ・・・。なのに・・・。

「だから、向こうに帰ったらちゃんと言ってあげるんでしょ?」

「ああ、勝手にいなくなるなって。俺のそばにいろって。」


俺にはお前が必要だって。

はっきりと言ってやるんだ。

あいつは律儀なやつだから、それがたとえ俺のお願いでも、命令でも、きっと守ってくれる。
どんな状況であっても・・・。



「や〜〜〜渋谷。ついに決意を固めたんだねー。いや〜俺のそばにいろ、だなんて!これは近々結婚式も近いかなー?」

「へっ? 俺声出てた!? っっていうか結婚て!!何言っちゃってんだよ村田!俺たち男どおし」

「またまた〜しらばくれちゃってーそんなんだとそのうち捨てられちゃうぞっ」

「捨てられねーよ アイツは俺にぞっこんなんだ。」

「あらま、ずいぶんとはっきりと言い切ったね〜。」

あーーもーー茶化すなーー!! アハハッと笑いながら逃げる村田を追いかける。
久しぶりに感じるこの雰囲気に怒ってたはずが自然笑みが漏れる。

あいつ、これ言ったら喜ぶかな?

それとも、当たり前だとかふんぞり返る?

言ったときのことを想像すると胸がわくわくと高鳴りだした。



そうだ、戻ったら 言ってやるんだ。
























「お前が用があるのは僕だけだろう。彼らを解放しろ。」

状況は変わっていなかった、それどころか法石を体中に宛がわれ意識を保ってるのもつらい。

船の上にいた兵士たちも全員囚われて縄でくくられていた。

「馬鹿だね、お前。なぜ私が鳩を落とさせたかわかる?お前をここに匿ってることを誰にも知らせないためだよ。」
そんなこともわからないの?とサラレギーは嘲笑う。

「こいつらは全員、処刑してもいいけど、そうだな、奴隷として雇ってあげるよ。」

「・・・く・・っ馬鹿な!!なぜこんなことをする!?そんなことして何になるっ!?」

カッと血がのぼり
声を張り上げた、意識が飛びそうになるのを必死にとどめ、相手を睨み付ける。

「お前は何も知らないの?」

サラレギーはしゃがみ込みヴォルフラムの前髪をつかみ引き上げ、無理やり顔を上げさせた。

「お前は、”鍵”なんだよ。」



・・・・・・カギ・・・・?



・・・・・・・・・・・・僕が・・・?



『ユーリ、それ・・・・』

『・・・うっ・・くっ・・コンラッドが鍵だったんだ。  あいつらそれを知っててこの腕を・・・』
『コンラートが鍵・・?』



禁忌の箱・・・その鍵は代々眞魔国の十貴族に託されていると聞いてはいたが、
その鍵が実際に存在するなんて信じられなかった。
だがあの時コンラートの腕で確かに箱は開きかけた。幸いにもあの時は箱と鍵が一致しなかったため
ユーリ達によってそれは阻止されたと聞いていたが・・・。



その鍵が自分だとは考えたこともなかった・・



「馬鹿な、箱は眞魔国に・・・。」

そうだ、先ほどギュンター達が持ち帰ったはずだ。

何千年も行方不明だった箱が最近になってみつかり、一刻も早く眞魔国へと。

「この国にもあるんだよ、ずっと昔から大切に保管されていた箱がね。」

背筋が凍るような感覚がした。だめだその箱に近づいてはいけない。何故だかそう思えた。
本能がそう叫んでいる。動かない体を必死にもがいてここから逃れようとするものの
乗ってる兵士たちはびくともしなかった。



「・・おまえはっ・・!いったい箱を開いてどうするつもりだ!?」



「そんなことをお前に教える必要はないよ。」

勢いよくつかんでいた頭を振り払われる。

「さあ、まずはこいつを箱の元へ。鍵であるかの確認だ。」

「・・・は!」



いやだ・・・嫌だ・・・・!



・・・・・・・・ユーリ・・・・・!!

















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