____夢をみた。

真っ白で何もない世界で。

膝を抱えてうずくまる僕は。



会えないと思った。

会いたいと思った。

会いたい・・・会えたら・・・

お前に・・・



大好きなユーリ。








水中華_______________6






声を聞いた気がした。



誰かが自分の名を呼ぶ声。

「・・・ラムッ・・ルフッ。」



声・・・?

・・・誰・・・だ・?

・・・呼ぶのは。

この声・・・。

聞いたことのある、力強い。

この声は・・・。

だって。・・・っ。

ユーリは・・っ・・・。

まどろむ意識の中、ずっと得られなかった光が差し込んできた。



「ヴォルフっ・・ヴォルフラム!!」



「・・・・ゆー・・り・・?」

強い力で引き寄せられる。
息もできないくらい強く抱きしめられた。

「・・ゆーり?・・っユーリっ」

覚醒してきたとき、自分を抱きしめてくれてるのはユーリだと分かった。

だって、もう・・・

もう、会えないと・・っ。

大好きなユーリの温もりに触れたとたん。暖かな腕に包まれたとたん。
僕はユーリの胸に顔を埋めて嗚咽があふれた。

「・・ユーリっ・・・ゆーっ」

ユーリの背に手をまわし、服をぎゅっと握り締める。

どうして・・?・・なぜ・?ユーリが・・ここにっ?

そんな声が聞こえたのか、頭の後ろをぐしゃぐしゃにかき混ぜられながら
きゅっとまた力が込められた。

「・・・遅くなって、ごめん。」

フルフルと首を振る。

「・・良かった。・・ホントに、良かった。・・・ヴォルフ。」

大好きな声に包まれて。
優しく撫でられて。
あふれ出した涙が止まらなかった。





自分の名を呼ばれた途端、腕の中に引き寄せた。
身体が自然に動いてた。
こいつを抱きしめたいって。

腕の中で嗚咽を漏らすこいつは、必死に声を我慢して。
俺の胸に顔を押し付けている。

こんな時まで我慢しなくていいのに。

この中に温もりがある。
腕の中の身体が震えながらしがみついている。

生きてる。

俺の腕の中で、確かにこいつは時を進めていた。



「・・良かった。・・ホントに、良かった。・・・ヴォルフ。」

失わずにすんだ。大切な存在。

いてくれるのが当たり前だと思ってた。
振り向けばいつもこいつがいると思った。
浮気者、とか、へなちょこ、とか。
俺にきつい事どんどん超投球って投げて来るけど。
それも俺のためだと。俺を背中を、
迷ってる俺のことを。

大丈夫だと、お前の道を進めと。

強く支えてくれた。



当たり前だと思ってたお前の存在。

失いかけて、   初めて

愛しいと、思った。





「あのー。感動の最中で悪いんだけど、さ。」

「なんだよ、村田。」

顔が自然と照れる。まさか心の中までは読まれてないと思うけど。
この親友、権、大賢者は分からない。

「ここにいられるのも時間の問題だ。早急に対策を考えたい。」

「・・ああ。」

大丈夫?と村田がヴォルフの顔を覗き込んでくる。

ヴォルフはちらっと瞳を覗かせて村田に向き直った。
「大賢者・・。」

「うん。・・・良かった。君が無事で。」

ぽんぽんと頭を撫でられて、また涙腺が潤んだんだろう、ヴォルフは再び俺の腕に顔を埋めた。

「いやー可愛いねー。渋谷もでれでれだね。」

こんな時に冷やかすなよ、と返しながらもヴォルフの身体を支えながら起き上がる。

「大丈夫か?」確かにここは冷えるしずっと居るのも危険だろう。

せめて船の中に・・。

「・・・ゆ・・り。」

ヴォルフが小さく呟く。

何?と顔を寄せると、震えながら、何かを恐れてるかのように。

「・・ダメ・・だ。・・僕だけ・・・なんて。」

「・・ヴォルフ?」

「ダメ、。・・だってまだ彼らは・・。捕らえられ・・っ。」

ぐらり、とヴォルフの身体が傾いた。俺は必死に手を回しながら、地面に膝をつく。

「ヴォルフ・・!?どうした?何言って・・。」

「やはり、他にもいたんだね。・・捕らえられた兵が。」

村田・・?

ヴォルフの方を見るとカタカタと震えながら両腕を掴んでいる。

「・・・いますぐっ・・・・ないと・・知ったら・・殺されっ

「ヴォルフっっ・・!!」

ダメだ、こいつにこんな顔をさせては。
誰だよ・・こんなに追い詰めたのは。

落ち着かせるために強く抱きしめる。
次第に身体の震えは止まり、肩が上下し始めた。

「・・・ヴォルフ?・・・どうだ?落ち着いて話せるか・・?」

できれば今はそっとしておきたい。
こいつから今、無理に聞きだすことは逆効果だろう。

けど、それはこいつ自身が許さない、と。
そう物語っていた。

ハアハアと息を荒くしながらも俺には分からない恐怖で顔を歪ませている。

「・・まだ、・・ぃるんだ・・。」

唇を震わせながら、懸命に言葉を告ごうとしているヴォルフの顔に手を添えて、その先を託す。

「・・・きっと、僕が、居なくなったと知れたら・・・殺され・・」





その時、後ろの物陰からガサっと物音がした。










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